はじめに

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この連載について

この連載では、世界で最も安価な PC となった Raspberry Pi(ラズベリーパイ)と、Raspberry Pi 向けの標準的な Operating System(オペレーティングシステム、OS)である Raspbian(ラズビアン)にプリインストールされているマインクラフト (Minecraft Pi Edition) などのゲームを教材とする Python(パイソン、AI の開発などに用いられる)のプログラミングについて連載をしていきます。

いきなり「???」となられた方、申し訳ありません。今後の回で順次解説していきますので、まずは以下をお読みください。

著者について

サラリーマンソフトウェア開発技術者です。
「組み込み系」と言われる、電気製品を動かすためのソフトウェアの開発業務に主に携わってきましたが、 近年の技術革新によってソフトウェア分野の棲み分けが従来とは変わってきており、 現在はバックエンド (*2) 系全般(たまに Web UI (*1))という感じです。

  • (*1) UI (User Interface) : 利用者が直接操作する画面などの部分
  • フロントエンド : UI やデザインなど、利用者が目にする部分
  • (*2) バックエンド : 計算処理や通信、イベント制御、OS との橋渡しなど、利用者が意識しない部分

「街のそろばん教室」のように、現代の手習いとしての「プログラミング教室」に可能性を感じ、2019 年から副業での活動を開始したのですが、可能性を見出したのは大手も一緒で、街のそろばん教室のようになれるのは、まだまだ先のようです。

この連載の背景

2020 年度から小学校でのプログラミング教育が始まりますが、目的は「プログラミング的思考の習得」ということになっています。
「プログラミング的思考」は、「プログラムを書くこと」によってより効率的に習得できると思いますので、ぜひご一読頂ければ幸いです。

…というのは建前で、本当はもう少し、今の日本の教育について危機感的なものを感じ、活動に至っております。

現代、ソフトウェアはものすごいスピードで進化している
(私もプロの端くれとして、日々ヒィヒィ言いながら勉強しています)
のですが、それゆえ一般の方々と技術革新との隔絶がどんどん広がっている気がしています。

これはどういうことかと言いますと、
「よーし将来ソフトウェア技術者になるぞー」と決意して大学を卒業してなれるかというと、どんどんなりにくくなってきているということです。

ソフトウェア開発を取り巻く現在の状況と、技術者採用の動向

私は一応、情報系の学部を卒業したのですが、プログラミングの成績は「優・良・可」のうち、 最も下位の「可」でした。
さらに言えば、数学も「可」だったので2回生からは履修をやめました。
さらにさらに言えば、私は元々高校の科目では「古典」が好きなド文系学生だったのですが、 パソコン関係に進みたくて、文系科目だけで入学できる情報学部のある大学に入ったのでした。

しかし、それでも「我々の時代(2000 年代前半)」はソフトウェア開発の会社に入れたのです。
それこそ、文系の学部を卒業して入社した同僚もたくさんいました。
それは、当時のソフトウェア開発は「人海戦術」で、人がたくさん必要だったからです。

今は「OSS(オープンソースソフトウェア、ライセンスの条件を満たせば
無償で利用できるソフト)」が業界を席巻しており、「業務で必要なライブラリ(ソフトの部品)やプラットフォーム (ソフトを動かす「場」や「仕組み」)を知っていて、それらを柔軟に活用できること」が開発者にとって非常に重要な素養になっています。すごい人なら、普通の人の 100 倍くらいの効率で開発を終えられる人だっています。
つまり、普通の大卒の若者を 10 人雇うお金で、すごい人に 10 倍の給料を支払う方が合理的な時代なんです。これが近年、プログラマーがプロスポーツ選手に例えられるようになった理由です。
実際にアメリカではプログラマーの年収は 1000 万円以上ということも珍しくありませんし、日本でも特別な技術者の場合には通常の給与テーブルとは異なる報酬を支払う企業も増えてきました。また転職市場の隆盛やジョブのマッチングサイトの台頭により、スター選手がフリーエージェント契約で仕事をするかのように、腕一本で様々な職場を渡り歩く人もいます。
その反面、ソフトウェア開発に必要な「人員の数」は減り続け、「普通の大卒の人」が得られるパイはどんどん無くなってきています。

将来、日本からソフトウェア技術者になれる人は激減する?

さて、そんな中において日本の教育現場は 「プログラミング的思考を身に付けることが目的で、プログラミングは目的ではありません。」というように、とっても呑気な感じです。
ですが、これは無理もないことです。小学校の先生は特定科目の専門家ではありませんし、これまでプログラミングをしたことも無いのに、教えられるわけもないのです。外国に行ったりネイティブと交流したことが無い先生が英語を教えるようなものです。
しかし、だからと言って最先端分野の人材が輩出できなくなって良いということにはなりません。
結局は、無理難題を突き付けられている学校教育の外側で、何とかできる仕組みを整えるしか無いのです。

プログラマーは向き/不向きがある職種であることは間違いありません。
ネットを見ていても「仕事が辛くて…」という苦悶の書き込みを見ることもよくあります。
(もちろん、ブラック企業が多い業界であることも理由のひとつですが…)

ド文系で大学時代には何の素養も見出せなかった私の場合ですが、 今はこの仕事に就いて本当に良かったと思っており、天職だと思っています。
私は朝が極めて苦手ないわゆる夜型人間なのですが、会社はフレックスタイム勤務なので、朝起きたらまずコーヒーを堪能して、それからゆっくりお風呂を満喫してから出社しています。
プログラミング作業も苦にならないので、会社に行くのはちっとも辛くありません。
会社からもそれなりの評価と待遇を受けています。

まとめ:この連載のねらい

私の思いもあり、つい文章が長くなってしましました。
まとめると、こうなります。

  • ソフトウェア技術者になるのは、これからどんどん狭き門となり、かつ高待遇になっていく。
  • 今の日本の教育では、どうやらこの波には対応できなさそうである。
  • 私自身は今の会社生活に満足しており、なり手が減っていくのは勿体無いし、最先端分野の人材が減ることは国の損失も大きいと思う。

そこで、なるべくたくさんの若い方々が以下のような経験をし、 将来のことを考えられる機会を提供したいと思います。

  • プログラミングってどんなものなのか
  • 楽しいものなのか
  • 算数や数学はニガテだけどできるのか
  • 将来仕事にしてみたいジャンルなのか

また、私自身も子供を持つ親ですが、これからプログラミング教育が始まっていく中で 「プログラミングがどういうものか」を知って頂く一助になればとも思っています。

ご興味が湧いた方は、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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のびのびラーニング
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Written by のびのびラーニング

AI 技術者 (TensorFlow Developer Certificate) です

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